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東京地方裁判所 昭和50年(特わ)261号 判決

被告人

一 国籍

韓国(慶尚北道永川郡永川邑采新洞一二六)

住居

東京都立川市高松町三丁目二七番二七号

職業

会社役員

山崎清こと崔文鶴

一九二七年二月一六日生

二 本店所在地

東京都港区赤坂二丁目一三番一九号

株式会社 永信物産

(右代表者代表取締役 山崎清)

出席検察官

検事

米沢慶治

主文

一、被告人山崎清こと崔文鶴を懲役一年及び罰金一、五〇〇万円に、被告会社株式会社永信物産を罰金一、二〇〇万円に、それぞれ処する。

二、被告人山崎清こと崔文鶴において、右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

三、被告人山崎清こと崔文鶴に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人山崎清こと崔文鶴は、東京都港区赤坂二丁目一三番一九号多聞堂ビル五階に事務所を置き、貸金業を経営するかたわら、同都中央区銀座四丁目八番二号三福ビルにおいて喫茶店「銀座カレント」を、同都港区赤坂二丁目二番九号アドレスビルにおいて喫茶店「赤坂カレント」を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、貸付金利息及び喫茶売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

一、昭和四六年分の実際所得金額が四七、三七六、七五八円あったのにかかわらず、昭和四七年三月七日、同都立川市高松町二丁目二六番一二号所在の所轄立川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、九八三、〇〇〇円でこれに対する所得税額が八七、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二四、九四九、一〇〇円と右申告税額との差額二四、八六二、一〇〇円を免れ(別紙(一)、(二))

二、昭和四七年分の実際所得金額が六五、四三四、五二〇円あったのにかかわらず、昭和四八年三月一〇日、前記立川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二、五〇〇、〇〇〇円でこれに対する所得税額が一〇二、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三六、七三七、二〇〇円と右申告税額との差額三六、六三五、二〇〇円を免れ(別紙(三)、(四))

第二、被告会社株式会社永信物産は、東京都港区赤坂二丁目一三番一九号に本店を置き、貿易、金融業、飲食店の経営等を目的とする資本金一、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人山崎清こと崔文鶴は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、貿易売上げ、貸付金利息及び喫茶売上げの一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和四八年二月一三日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一二六、八三九、七六二円あったにもかかわらず、昭和四九年二月二八日同区西麻布三丁目三番五号所在の所轄麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇、四四〇、一五八円の欠損でこれに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度の正規の法人税額四六、三七二、七〇〇円と右申告税額との差額四六、三七二、七〇〇円を免れ(別紙(五)、(六))

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書八通

一、収税官吏宇都宮覚作成の貸付金残高および受取利息等調査表(貸付金利息)

一、同じく前受利息調査書(前受利息関係)

一、同じく喫茶売上調査表(喫茶売上)

一、同じく喫茶在庫たな卸高調査表(たな卸関係)

一、同じく仕入(付買掛金)調査書(喫茶仕入)

一、同じく給料賃金調査書(給与)

一、同じく経費調査書(通信交通費、消耗品費、福利厚生費、公租公課、手数料、家賃、水道光熱費、広告宣伝費、修繕費、交際接待費、雑費)

一、同じく借入金等調査書(支払利息)

一、同じく雑損失調査書(雑損失)

一、同じく固定資産各期減価償却費および各期末残高調査書(減価償却費)

一、同じく雑収入調査書(雑収入)

一、同じく事業税調査書(事業税)

一、同じく前払費用調査書(前払費用関係)

一、同じく譲渡所得(損失)調査書(譲渡所得関係)

一、同じく譲渡(除却)損失調査書(法人関係の譲渡損)

一、同じく預金調査書(雑所得(定期積金給付補てん金)、法人関係の受取利息)

一、同じく貿易売上調査書(法人関係の貿易売上)

一、同じく貿易仕入および諸掛、手数料調査書(法人関係の貿易仕入、貿易諸掛、貿易手数料)

一、押収してある次の証拠物(申告額及び公表分)

1  昭和四六年分所得税確定申告書一葉(昭和五〇年押第八八九号の1)

2  昭和四七年分所得税確定申告書一葉(同押号の2)

3  法人税確定申告書一綴(同押号の3)

(法令の適用)

被告人崔文鶴につき、

判示第一の一及び二の各所為は所得税法二三八条に、判示第二の所為は法人税法一五九条に該当するが、いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重い第二の罪の刑に法定の加重をし罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一、五〇〇万円に処し、換刑処分につき同法一八条を、執行猶予につき同法二五条一項を適用する。

被告会社株式会社永信物産につき、

判示第二の所為は法人税法一五九条、一六四条一項に該当するのでその所定金額の範囲内で被告会社を罰金一、〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲)

別紙(一) 修正損益計算書

山崎清こと 崔文鶴

自 昭和46年1月1日

至 昭和46年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二) 税額計算書

(昭和46年分)

山崎清こと 崔文鶴

〈省略〉

(注) 所得税額速算表にもとづき算出した

46,364,000円×0.65=30,136,600円

30,136,600円-5,187,500=24,949,100円

別紙(三) 修正損益計算書

山崎清こと 崔文鶴

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(四) 税額計算書

(昭和47年分)

山崎清こと 崔文鶴

〈省略〉

(注) 所得税額速算表にもとづき算出した

64,316,000円×0.7=45,021,200円

45,021,200円-8,284,000円=36,737,200円

別紙(五) 修正損益計算書

株式会社 永信物産

自 昭和48年2月13日

至 昭和48年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(六) 税額計算書

株式会社 永信物産

〈省略〉

(注) 〈省略〉

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